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冤罪

7月 1st, 2009

国家犯罪の最たるものは戦争である。強大な権力が犯す犯罪行為は、他にもある。冤罪がその一つだ。

足利事件の菅家利和さんは、この国家権力の誤った行使によって、17年の長きにわたって拘束された。処刑されていなかったのが救いだが、日本の司法の拭い難い汚点だ。

警察・検察の幹部が謝罪したものの、失われた時間は取り戻せない。かって一方の当事者であった地裁裁判官は、「仕方がなかった」と他人ごと然。高裁の対応は、臭いものにフタ。三審に加え、再審請求をも却下してきた裁判所の責任はどうなのだ。仮に法務大臣の首を飛ばしたところで、何の足しにもならない。

一件落着と捜査陣が表彰まで受けてのんびりしているうちに時効成立。幼い女児を殺害して、塵芥のように捨てた卑怯・卑劣な真犯人は、どこかでほくそ笑んでいるのだ、無能な警察を嘲笑っているのだ。

松本サリン事件はどうであったか。富山の婦女暴行事件はどうであったか。

事の始まりは、第一線捜査員の資質・人間性なのだ。己が付与されて担う権力の意義や強さをどのように弁えているのか。確かな裏付けの乏しい思い込みや予断をもって決めつけるばかりか、誘導尋問と称して、ときには嘘偽りを交えてまで「落とし」にかかる。ここから誤った方向づけが為されるのだ。レールが一度敷かれると、検察もそれに乗っかってしまい、おいそれと方向転換はしない。裁判の過程で、こうした誤りをどの程度正せるのか。裁判員制度や争点整理など、一見、改革に努めている風ではあるが、国民の信頼を果たして得られるのか。

事実とは異なる現場見取図をかざして決めつける刑事、全治期間を値切ってくる検察事務官、支い棒が要るんじゃないかと思うくらいにふんぞり返って肘を張り、飛び降り自殺の現場にゆっくり歩を運ぶ警察官・・。かって経験したものである。